飯能アルプスとは
埼玉の西部にある天覧山(197m)~伊豆ヶ岳(850.9m)の稜線にある山々の総称。
多峰主山(271m)・天覚山(445.5m)・大高山(493m)・子の権現(630m)・中ノ沢頭(622.7m)・高畑山(695m)・古御岳(820m)といった山が含まれる。
各山から駅に通じるエスケープルートがあって自分の体力レベルに応じた柔軟なコース設定ができる事や、標高が低いもののアップダウンは激しい事から、初級~中級者の登山トレーニングに適した難易度と言われている。
ヤマノススメ巡礼ルート
今回、登ったコースはこちら↓
天覚山・吾野ノ頭・大高山・阿字山・子ノ山 / ともがらさんのヤマノススメ巡礼マップの活動データ | YAMAP
7:30に車で東吾野駅に到着、天覚山に登頂したのが8:05、大高山が9:17
そこから下山して10:10に吾野駅。10:35の電車で東吾野駅へ。停めてあった車に乗って、子の権現天龍寺を参拝して終了という流れ。
出発
自宅から90分、車を走らせて東吾野駅へ到着。
高速道路を使わなかったから結構疲れた。運転嫌いな人は登山を趣味にするのハードル高いよなぁとか考えた。
東吾野駅の横にある駐車場に停めたんだけど、1日500円って値段に衝撃を受けた。駅の駐車場がこんな安くていいのか…!
ともかく、そこで装備を身に付けて、いざ出発。
早速、例の看板を発見。ユガテは集落の名前らしい。
靴が足に馴染んでないからか、アスファルトを歩くと足首の前側が少し痛かった。去年バドミントンで怪我した膝もまだまだ怖いのもあって、スタートした瞬間から嫌な不安感が湧いてきた。
曇天模様の空で遠くは霞がかかってるし、看板も錆びれてるしで、どこか不穏な空気がまとわりついてくる。
引き返したくなるレベルの雰囲気だったけれど、僕はこういう時、逆にテンションが上がってしまう。
「雰囲気すげぇ~!」って能天気に言ってる僕はいつか痛い目をみると思う。
天覧山
道が登山道っぽくなったと思ったら、熊注意の掲示が。
もう帰ろうかな…。
イラストの熊の顔が怖すぎて、本気で帰りたくなった。
こんなビビらせる必要あるか⁉・・・ああ、あるか。
分岐に到着。強いて言えばここなちゃん派の僕は尾根コースに行きたかった。けど心が折れていたので迷わず沢筋コースを選択。
言い訳させて欲しい。
この日は、バドミントンの試合の翌日だったからスタート時点から筋肉痛で体が重かったんだ。小さい大会だったから大丈夫だと甘く見てたんだけれど思ったより疲れが残ってて、ここに着いた時点でもう死にそうだった。
ここで試合の翌日に登山という脳筋スケジュールを組んだことを激しく後悔した。
静かな林道といった趣だけど、時折、寂びれた人工物が目に入るから何か人類が滅びた後の世界に迷い込んだ気分になった。
看板も朽ち果ててるし、横倒しになった木が山道にかかってるし、人の手が及んでいない感じがして不安とわくわくの入り混じったような不思議な気持ちになる。すごくいい。
「天覚山を守る会」の表記があちこちにあった。
整備されてないわりに主張が強い。
昔は活発だった会なのか、原生の自然を守る系なのか、はたまた……なのか。
前者だと解釈一致で嬉しい。
自然に囲まれていて、全く人の気配はないけれど、はっきりと人間の痕跡はある。
今は人が全然いないけれど、里山として愛されていて、賑やかな時代があったことも分かる。
ノスタルジックな気分に浸りながら歩いた。
ようやく山頂。時間にしたら30分くらいだけど、妙に長かったように感じる。
吾野ノ頭・大高山
ここからが本番。
吾野ノ頭まで30分、大高山まで更に30分、尾根歩きが続く。
快適に歩ける場所も多いけれど、木の根っこで足場が悪い箇所もあるし、何よりアップダウンが激しいから結構足にくる。
杖があったら楽かなと思って探してみたら、130㎝くらいの丁度いい木の枝を見つけた。
適当な杖が1本あるだけで、全然キツさが違う。
正直なめてた。トレッキングポール邪魔そうとか思っててすみませんでした。
上半身の体重を預けられるのが強い。足で持ち上げる運動をしてたのが、杖でバランス取れる事で体重移動を使って登れるようになる。
これは全く別物と言っても過言じゃない。そのくらい違う。
ということで、相棒の助けを借りて歩く。
何度か挫けそうになったけれど、何とかたどり着いた。
木が防いでくれていたから濡れる事はなかったけれど、途中から雨が降り出した。
遠くでパラパラ鳴る雨音を聞きながら歩くのも趣があって良い。雨が強くならない事を祈り、ゆっくり確実に歩を進める。
と言っても滑るのを気を付けてとかの判断をしたわけではなく、単純に足がキツくて急ぐだけの体力がなかっただけの話。
下山。降りてきた時の安心感すごかった。舗装道路に入った時は「ただいま」って言いたくなるくらいの帰ってきた感。
駅に到着したものの、次の電車は30分後だったので、駅前の休憩所で一休み。柿ピー買ったら、おばちゃんが中の暖房効いた部屋で休ませてくれた。熱いお茶まで頂いて、身も心も温まった。
おばちゃんの話では、この辺りの山は個人が所有してて、ヒノキとか木材の需要が高かった頃は林業で栄えてたらしい。
それが木材需要と単価の低下や補助金の打ち止めとか色々あって、今の林業は二束三文なんだそうで、みんな林業を辞めたり、別の仕事メインの兼業スタイルになっていったそうな。
だから今は寂びれていて、放置される山が多くなってきているんだとか。
登山してる時に感じたノスタルジーをここでも感じた。
というか、地域全体の状況が登山道に現れていたんだと思う。
東吾野駅に到着。
ヤマノススメに出てきただけの能天気な看板が、帰りには全然違った景色に見えた。
子の権現
東吾野駅に停めてた車を回収して、子の権現へ。
子の権現とは、正式には「大隣山雲洞院天龍寺」と言い云々…まあ足に関する謂れのある有名なお寺って認識で良さそう。
すれ違うのも一苦労な道幅のぐねぐねな峠道を20分くらい車で登って到着。
うーん、不気味。
なんか『千と千尋の神隠し』みたいな世界観にトリップしそうな雰囲気。
絶対に何か宿ってる。これが御神木か…と納得させられた。
目の前に立った時に、言葉を失うというか、有無を言わさない荘厳な雰囲気があった。
石像を過ぎた辺りから神域に入り込んでしまった気がして、怖いとかそういうのを超えて、トランス状態になってた。
こういうのにハマるとパワースポット巡りとかしたくなるんだろうな。
少し気持ちが分かった。
遠足向けの注意書きがあった。こういうの見ると安心する。
そしてやたらと派手な仁王像。この間を通り抜けるのも、なんか身が縮む。
『神様の言うとおり』とか『GANTZ』に出てきそうな感じ。
こいつもなぁ。もうずっと心臓が強張ってる。
到着。掃除してるおじさんがいて、すごくほっとした。
めちゃめちゃ大きい草履と下駄。撮り忘れたけどハイヒールもあった。
足の健康を祈って。
昔から足の怪我が多いし、昨年手術した膝が今も尾を引いてるのもあって、切実に神頼みした。
その後、周りをうろうろしてたら変なものを見つけた。
人の頭と手だ。
両方とも、お寺とかがあるメインの場所から少し外れた場所に唐突に表れるというか、とにかく違和感しかない。
足だけじゃなくて、手も頭もあるなんてお得。
なんか意図がありそうだけど、説明も何もない。まあ面白いから良し。
一人じゃなかったら、もっとはしゃいだ写真を撮っていたと思う。
雨の中、タイマーをセットしてカメラとの間を何度も往復しながら色んなポージングをするメンタリティは持てなかった。
ひだまり山荘
全部終わっても13時くらいだったので、帰り道にヤマノススメの聖地で飯能駅にある登山用品店「ひだまり山荘」に行ってみた。
一目でヤマノススメ所縁の地だと分かる様相。そこまでコアなファンではないので逆に入りづらいまである。
ファンが書ける自由帳があったり、グッズが置いてあったりしたけど、購入できるグッズはTシャツくらいだし、店内が狭いので店員さんとの距離が近くて、微妙に居心地が悪い。
写真だけ撮って帰るのも気まずいし…Tシャツ買いたいわけでもないし…と逡巡した結果、
↑の行動食と登山用靴下を買って帰った。
「ヤマノススメのために来たんじゃなくて、買い物に来たら知ってるアニメの展示があったから、ついでに見てるだけですよー」
みたいな顔をするために店内を物色したわりには、買った物があまりにもその場凌ぎ。
今となっては、何故そんな顔をしたかったのかも分からない。
「ただのヤマノススメファンじゃなくて、登山が好きでヤマノススメも好きなんです!」
そう言いたかったのかもしれない。よく分からないプライドがあったのだと思う。
好きなんだからファン…オタクで良いじゃないか。ヤマノススメが好きだという気持ちを隠す必要なんてないんだよ…と諭したい。
ということで、オタク道を一歩前進したところで飯能アルプス登山は一旦幕を閉じ、また車で90分かけて家に帰った。
感想
聖地巡礼を通して作品への愛が深まるみたいなサイクルがあるのかもしれないと思った。
実は、元々は高尾山~陣馬山に登ろうと思っていて、この前登った岩殿山がヤマノススメの聖地だったという偶然から登る山を飯能アルプスに変更した経緯があるのだけれど、今回の巡礼で作品の良さも実感したし、もっと他の聖地にも登ってみたいという気持ちが湧いてきた。
聖地巡礼というものをしたのは人生で初めてだった自分にとって、聖地巡礼をした唯一の作品である「ヤマノススメ」は自分の中で特別になってきていると感じる。
作品と自分の体験を結び付けることで、作品への愛を深め、新たな体験のきっかけも得る。
素晴らしいことじゃないか!
さて、この辺にして登山の感想を書こう。
感想 take2
正直、曇天ということを差し引いても景色はそんなに良くはなかったし、自分の少ない経験に照らしても、天覚山~大高山でなければならない理由は特に見つからない。
でも、山ってそんなもんで、「なぜエベレストに登りたいのか」と聞かれたジョージ・マロリーという著名な登山家が「そこにあるから」と答えたという手垢に塗れた名言があるけれど、多くの人の琴線に触れたからこそ手垢が付いているわけで、僕もそういうものなんだと思う。
ヤマノススメが…とか、比較的自宅から近いとか、ヤマップのバッジが…とか、そもそも山に登るのは…とか頑張れば説明できるけど物凄く面倒くさいし、多分うまく伝わらない。
だから、「登ってみたかったから登った」と言うに留めておきたい。
ただ、登って良かった事はハッキリと言えるから、書き留めておきく。
まず、体力づくりと山歩きの経験を積むのに丁度よかったこと。アップダウンが激しくて、木の根や岩が入り乱れてたり色んなバリエーションがあったおかげで、色んな足の着き方とか体の使い方、杖の付き方とかをたくさん練習できた。
キツいのを乗り越えた!という体力や精神だけでなく、上り下りを繰り返すことで山歩きの技術が身についている感覚があって、高い山に登るための自信を少しだけ得ることができた。
僕はガチガチのスポーツマンなので体力・精神面の不安は元々あまりなかったのだけれど、山ならではの危険とか、山歩きの経験が浅いのが二の足を踏む大きな要因になっていた。だからこそ、ただキツイだけではない低山で経験を積めたのは、高山へ臨む足がかりになったと思う。
それから、人の気配が全くなかったのは凄くよかった。
僕は、家族、友人、赤の他人でも関係なく誰かしら人がいると対人スイッチが入ってしまう。人とすれ違っただけでも、遠くに人が見えただけでもスイッチが切り替わるので、ここまで長い時間対人スイッチをオフで過ごせたことは記憶してる限りでは無い。
自分が人だということすら忘れて、本当に自然の一部になったような感覚になる瞬間があった。
天気が悪いからこそ、自分しかいない。そう考えると、曇りや小雨くらいなら悪くないなって気すらして、これも新しい感覚だった。
その辺も含めて、自分が想像以上に登山向きな性格をしていると分かったことも収穫だった。
聖地巡礼やトレーニングだけじゃなくて、色々な発見や収穫とか面白いものもあって、アップダウン激いし身体重いし天気悪くて正直かなりしんどかったけど、それでも行ってよかった。
片道90分ってのは割と近いし、他の山にも登って飯能アルプス制覇するか。
登るたびに登りたい山が増えていく…沼だ。
終わりに
ここまで読んでくれてありがとう。
現時点では、赤城山、筑波山、陣馬山には近いうちに登る予定で、というか既に赤城山には登ってきた。とりあえずヤマップのヤマノススメバッジをコンプリートしてから、百名山中心にガンガン登っていこうと思うので、良ければ暇つぶしにでも僕の奮闘を読んでくれたら嬉しい。
ヤマップの活動記録と合わせて登山の参考になれば幸いです。
ただ好き勝手書いてるだけだけど、これが誰かの役に立てば凄く嬉しい。
以上、お互いに良き登山ライフを。
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